料理ネタ


2006年8月

8月1日(火)

・ビール
・チキンカレーライス
・コーヒー

夫が作ってくれた。2時間煮込んだだけあってマイルドにまとまっていた。いつもながら助かっています。

仕事面での懸案事項のひとつは、現段階での解決ポイントに落ち着いたかな。プライベートでは、いままさにふんばりどころかな。いずれにせよ長いこと世にはばかっていたいので(長生きしたいので)、憎まれっ子度アップをモットーとして生きる。

お願いだから、何事もうまくいってくれ。
8月2日(水)

・ビール
・天ぷらそば
・焼きなすのおひたし
・オクラのしょうゆマヨネーズソース
・コーヒー

7月13日に受けた健康診断のマンモグラフィ(乳房レントゲン撮影)の結果が「要精密検査」であることを、沖縄帰りの週明け月曜に知り、正直全く気分が浮かなかった。バカンスの余韻にひたっている場合ではなくなってしまった。今朝、自宅から少し離れた別の専門病院でレントゲン写真の再読影と触診とエコー検査を受けた結果、問題ないという結果が出た。ほっとした。念のため年内にもう一度検査を受けてみるようにとのこと。必ず受診するつもりだ。

あさって金曜に学会発表があるので、明日から名古屋に出かける。実は今日は、学会初日の受講をキャンセルして検査を受けにいった。というのも来週の火曜から9月後半までフィールドワークに出かけるので、今日ぐらいしか時間的余裕がなかったから。

保育園の迎えと夕食は夫が担当してくれた。ありがたかった。
8月3日(木)

・鶏中心の居酒屋メニュー

ここ数日は、最悪の場合、研究活動はもちろん、もう家族にも会えなくなるかもしれないと、いろいろなことを思っていただけに、普通に学会に行っていろんな方とお話できることに純粋に幸せを感じてしまった。私はどちらかというと研究がらみとなるとぴりぴりきついところがあるのだが、今はどうしても世界がきらきらと明るく見えてしまう。ためになる話や興味深い話も聞けたし。ちゃんと顔を覚えてもらおうと、なるべくたくさんの人とお話するように、いつもより社交的に振舞った(と思う)。

夜は、知り合いにおしえてもらった名古屋大学でやっているジェスチャー関連の研究会に、ほとんど事前情報を持たずにのこのこと初めて参加した。こちらは若手中心の研究会だった。論文や学会を通じて、名前だけ、もしくは顔だけ知っていた人ばかり。ほんと世界は狭い。懇親会として夕食をともにした。いま自分のなかでも変な感覚で、研究の中身そのものよりも、とにかく話をして、どこかでつながっていたい。とにかく長生きしたい。というか、まだ絶対に死にたくない。この世への煩悩だらけで、達観なんてできないよ。自分でもつくづく未熟な、のみの心臓の持ち主だと思う。

でも、そろそろ頭の切り替えも必要だ。研究モードへの切り替え。というか、今になって、もっとジェスチャー研究の中身をおしえてもらえばよかったと思っている。ばか。明日は発表だし、ふわふわせずに、気を引き締めよう。
8月4日(金)

・赤ワイン(グラス)
・ホワイトアスパラのプリン
・ミネストローネ風リゾット、イベリコ豚のロースト乗せ
・カモミールティー

ポスター発表をした。たくさんの人が見に来てくれて、たくさん有益なコメントをいただいた。発表して本当によかった。

いろいろな学会に出て思うことだが、外野から文句をいうのはたやすいが、それだと自分の得るものはゼロ。文句いっている時間すらもったいない。そういう場合はきっぱり関わらないようにするのがお互いのためだろう。これから年をとっていって、よほど気をつけておかないと、どんどん他の人の意見を取り入れにくくなっていくだろうからなあ。どんなとこからでも何かしら刺激を受け続けられるよう自分のコンディション(とくにメンタル面)を整えておく必要があると思った。

名古屋・中京大学での学会帰り、京都のJR伊勢丹のレストラン街でさくさくっと食事して、帰宅した。しばらく行かないうちに、伊勢丹のレストラン街は大幅に改装され、ラーメン小路なるスペースのなかで迷ってしまった。
8月5日(土)

・ごはん
・中華風春雨スープ
・鶏の酢照り焼き
・ほうれん草の白和え
・きゅうりの漬け物
・コーヒー

夫が作ってくれた。鶏の酢照り焼きはオレンジページの『和食のシンプルレシピ』から抜粋したものである。夏場に特におすすめの、酢を効かせた献立だ。

午前中、息子と私のダブルで、小児科・内科のつなもと医院を受診した。二人とも咳が一向におさまらず、とくに夜寝るときにえらい苦しい思いをするからだ。気管支を広げる薬をその場で吸入したら、咳の頻度がかなり減った。その後、綱本先生に処方してもらった薬を飲んだら劇的に症状が緩和された。息子のほうもよくなっているみたいだ。

綱本先生は、これまでも息子のかかりつけの先生として家族の信頼を集めていた。ただ、親である私たちは息子の受診のついでに何度か診ていただいたことはあるが(たいてい同じ伝染病にかかる)、病気の子どもの順番のなかに自分たちが割り込むことに少し遠慮もあり、単発で症状が出たときに、いくつか他の病院もいいところがないか試しに受診していたのだ。

こちらに越してきて2年間、病院にかかるほど大した病気にかかっていなかったせいで、受診した病院は他に2箇所(いずれも内科)。先日の乳がん検査騒動で、さらに2箇所の病院をめぐった。このおかげで、綱本先生を我が家のホームドクターに、外科的手術など少し深刻な事態になったら奈良医療センターの中辻直之先生に診てもらうことに満場一致で決まった。お二人とも信頼のおけるとてもすばらしい医師だ。ここ関西での病院選びも、雨降って地固まった感がある。めでたい。
8月6日(日)

・まぐろの漬け丼
・なめこの味噌汁
・蒸し野菜のごま酢味噌だれ
・もずく
・きゅうりの漬け物

昼間夫は趣味のラジコンヘリのフライトを堪能した代わりに、夕方から私はあさってからの長期出張の一対策として美容院に行ってきた。ゆえに今日も夫が夕食づくりを担当してくれた。ここしばらく夕食を作ってないなあ。

からだがだるくて食欲がない。息子も熱っぽく、食欲不振。猛暑のためなのか、薬の副作用なのか、エアコンかけっぱなしのためなのか、よく分からない。すっきりしゃっきりする日はいつになるのか。。。
8月11日(金)

・マグロのカマ焼きなど、ペンションごはん

長いこと更新できなかった。いま、北海道美瑛町の白金温泉というところに仕事で来ている。青年団の新作の合宿稽古に同行するためである。無事に来れたことが奇跡に近いんじゃないかと思うほど、今週はいろんなことがあった。

まずなんといっても、息子が風邪をこじらせ肺炎になり、月曜に緊急入院することになってしまったこと。私たち夫婦だけでは乗り切ることができず、実家の母に来てもらって交代で24時間看護(付き添い)をおこなった。子どもが24時間点滴につながったまま、酸素吸入やそのほかの器具をずっとつけっぱなしになっている様子を見るのは忍びなかった。本人も歯がゆかったのであろう、暴れたり、ふてくされたり、抗議のおお泣きをしたり、ゆっくり休む暇がなかったと思う。

出張を2日間延期したが、これ以上の延期は仕事に差し障りが出すぎるので、後ろ髪を引かれる思いで、昨日北海道に発った。今晩、母に電話すると、今朝おこなった検査の結果がよかったので、点滴がはずれたとのこと。飲み薬のみの治療となり、明日はお試し外泊もできるそうだ。ひとまず、ほっとした。

私のほうも息子の付き添い中の深夜に、咳の発作がおきて、看護婦さんを呼んで吸入してもらったり、近年まれにみる体調の悪さだった。けれどもいったん北海道入りすると、さすがに涼しく、温泉との相性もよいのか、からだが軽く元気になってきている。転地療法。

あとは、もっとも長時間の付き添いをおこなった夫が、なんとか倒れないでこの夏を乗り切ってくれることを祈るばかりだ。彼ももうすぐ出張だが、行き先は北京。私のように転地療法効果を期待したいが、ちょうどその頃靖国参拝問題で反日感情が高まってそうで、微妙なところである。

26日まで美瑛町にいる。今ここにいれることを感謝しながら過ごしていくに違いない。前回のようなパケ死が怖いので、ぼちぼち更新することにするつもりだ。
8月14日(月)

・ペンションごはん

ペンションのごはんは、料理上手な奥さんが連泊客である私たちにも配慮しながら腕をふるってくれて、毎日おしいく食べている。どちらかというと濃厚な味のものが多いので、油断するとご飯何杯でもたいらげてしまう状況に陥りがちだ。北海道は食べ物がおいしい分、節制が必要である。退院後ここの温泉に直行してきたお客さんで、げっそりやつれてた人がしばらくここにいて4キロ太って元気に帰っていったという例も聞かされたので、なおのこと。

息子は退院できた。電話の声もとっても明るく、元気そうだ。ただ夫から話を聞くと完治というわけではなく、私たちの仕事の都合で岡山に連れて行くしかないから、やむを得ず退院を許可したという感じらしい。岡山でも継続治療が必要とのこと。本人は暴れたくて仕方ないところを、おとなしくじっとさせていないといけないので、子守はとても大変になるのではないかと思う。申し訳なく思っている。

新作『ソウル市民:昭和望郷編』の台本はまだ完成していない。稽古をやりながら、台本を書き進めている感じである。この先どうなるか自分たちも分からないのは、楽しい。新作の稽古の醍醐味である。毎回新しいセリフを覚えないといけない俳優さんたちはむちゃくちゃ大変だろうけど。
8月15日(火)

・ペンションごはん

新作の稽古時間が、10:00〜12:00、20:00〜22:00に変更になった。この合宿では、平田オリザさんがフランス上演のために書き下ろした日仏合作『別れの歌』の稽古も平行しておこなわれることになっている。少し遅れてやってきたフランスチームも今日から本格的に稽古が始まったのだが、午後いっぱいはフランスチームの稽古に充てられることになったからだ。こちらの稽古も見学可能とのことなので、機会をみて見させてもらおうと思っている。フランス人俳優はもちろん日本人俳優にもフランス語のセリフがたくさんあるそう。俳優はたいへんだ。

問題はぽっかりとあいた午後の時間の使い方だ。稽古場からペンションに戻れば、源泉かけ流しの露天風呂が私を呼んでいる。よくぞ温泉地で合宿を開催してくださいました。そうでなくても夏の北海道は大変気持ちがよい。ふらふらとサイクリングに出かけてしまいたい気分山盛りなのだ。ただし山にはひとりで絶対入らない。恐ろしいヒグマがいるから。げんに、クマの出没情報も今朝入ってきた。

この辺りは朝が早い。どれくらい早いかというと、研修施設の方に、「自転車は朝何時から借りられますか?」と聞いたら、恐縮して「すいません、5時からなんです」と答えるくらい朝が早い(←俳優さんから又聞き)。登山客が多いからなのかな。ペンションの朝食時間も7時に決められている。朝の入浴時間は5時半から7時まで。郷に入っては郷に従えのとおり、私もすっかり早起きになって、今朝などちゃっかり朝風呂に入った。

夕食をそそくさと食べて、日中緩んだ顔を引き締め、再び緊張感を高めて現場入りしないといけない。稽古場とペンションの往復で結構汗をかく。遅い時間にペンションに帰り着くので、夜の温泉入浴はタイムアウト寸前か、不可能となってしまう。源泉かけ流しのため、10時半には掃除が入るからだ。いずれにせよ、一仕事終えて、ゆっくり湯に浸かることはできなくなった。普通は夜休むところをこの合宿では昼に休む。簡単なようでいて難しい「精神鍛錬」的課題だ。テンションの持って行き方が難しい。持久戦なので、ニュートラルなローテンションを保つのが肝要だと思う。

とはいえ、ただでさえ景色のいい地域だ。とくに陸橋から眺める夜の景色は格別である。ずっと下から川のせせらぎがきこえ、下から木立が立ち上がり林を形成している。林上部の細い枝枝を近景に、その奥遠く向こうには、十勝岳やら美瑛岳やら、2000メートル級の山々の稜線が見える。その周りにはうっすら靄がかかっている。まるで息子の大好きな絵本、ノルシュテインの『きりのなかのはりねずみ』の風景そのままのよう。幻想的。墨がかった黄色の月が出ている日には、それはもうあなた。ゆういちろうに見せてやりたいなあ。でも、実際は怖がって暗い室外に出ることすら無理だろうなあ。などなど、つい妄想のテンションが上がってしまう。
8月16日(水)

・ペンションごはん

今日から岡山の実家で息子の面倒を見てもらうことになっている。夫と連絡をとったら、無事着いたとのこと。息子は昼寝中で話すことはできなかった。夫いわく、昨晩寝る前に、息子は騒いだことを注意されて、そっぽ向いてふててしまったそう。しばらく壁のほうに向きっぱなしなので「なにふててんの?」と聞いたら、「あのな、えっとな、ゆういちろうな、さびしいねん」と答えたそうだ。

なんか切なくなってしまった。入院中は、点滴につながれて歯がゆかったのか、ことあるごとに「お母さんなんて大嫌いや。あっちいって!!もうお母さんお父さんに会えなくなってもいいもん。ゆういちろうはひとりでいく。」と私に悪態をつきっぱなしだった。3歳児にして、懸命に強がっていたのだ。

私は、息子が大きくなって、今よりもっといろいろなことを理解できるようになったとき、息子がこの私の仕事に誇りを持ってくれるような「業績」を残したい。これが私のせめてもの強がりであり、個人的な業績主義だ。
(前回のフィールドワーク中に起こした被害金額10万円のパケ死の件があるので、ネットワーク環境の整っていない北海道合宿期間は、日記を数日書き溜めてからFOMAでアップするというけちけち行動に出ます。)
8月18日(金)

・ペンションごはん

ひさびさの休日。ノンストップで仕事に集中してきて疲れがたまりがちだった自分へのご褒美となる日にしたいと願わずにはいられないほど、楽しみにしていた。(平田オリザさんが東京にいったん帰らなければならないので、稽古休みとなったのだが、いったい平田さんはいつ休んでいるんだろう。)

この休日は、そよそよとそよぐ風のなかにたたずむ麦わら帽子をイメージに、お花畑を見にいこうと心に決めていたが、あいにく前夜から朝方にかけて激しい雨が振り、天気予報も1日中、傘マークが出ていて、計画実行をあきらめかけていた。ところが、10時ごろから雨がやんだ。バスで美瑛駅前に出て、種々の銀行振り込みを済ませたあとも、雨はやんでいた。この際なので、富良野のラベンダー畑を見に行くため、富良野行きの電車にのった。

富良野駅前は、なんというか寂れた感じで、おいしいお昼ごはんを食べさせてくれるような店が見当たらなかった。だったら富良野ワインハウスで食事をしようかなと思い、タクシーに乗った。すると運転手さんが、このあともいろいろ見たいんだったら1万円で回るよと提案したので、1時富良野発から4時半美瑛着の3時間半の契約でお願いした。学生時代では考えられなかった贅沢。自分でも大人になったと思う。せっかくの休みなんだからあれもこれもしたいと、たんに時間に追われてしまっている人になったとも言い換えられる。

お昼:富良野ワインハウスは予想していたのと違って、高速のドライブインの食堂みたいな感じだったので、引き返した。代わりに最近、富良野カレーなるものを売り出しているみたいで、運転手さんおすすめのカレーの店を2軒回ったが、長蛇の列だったりお盆休みだったりして、いずれも振られた。そのほか2軒も振られ、結局、運転手さんお勧めのラーメン屋へ。私はラーメン好きとはほど遠く、それゆえよほどのことがない限りラーメンはなんでもそこそこおいしいと思ってしまうラーメン音痴なのだが、それでも、この日入った店の塩ラーメンは塩気だけが勝っていて、がっかりするほどおいしくなかった。

チーズケーキ:お昼ごはんは全くついていなかったが、俳優さんがおしえてくれたフラノデリスというケーキ屋さんのおいしいチーズケーキを食べて、気分は大逆転。上向きになった。地方発想も可ということで、遅すぎるお中元もかねて、世話になっている親類家族に送った。我が家もチーズケーキがどうしても食べたくなったら、ここから取り寄せよう。味、触感とも複雑な層をなしながら、口のなかでバランスよくまとまる、うっとりするほど出来のいいケーキだった。

ラベンダー畑:富良野で3箇所回った。そのなかの「ファーム富田」では、運転手さんが要所要所でいろいろ解説してくれながら案内してくれた。2代目の先見の明があって、今の富良野ラベンダー人気があるそうだ。運転手さんはもちろんずっとべたっとつきっきりということではなく、ひとりで自由に見て回れる時間もあった。そこでお気に入りの香水を見つけた。さっそく購入して試している。魔よけ(虫よけ?)になりそう。ただ、全般にラベンダーの花は終わっていて、ラベンダー畑めぐりは少し物足りなかったかな。ラベンダーの香りに深く包まれていたいという期待が膨らみすぎていたから、余計にそう感じたのかもしれない。

美瑛の丘:美瑛まで戻って、「四季彩の丘」というところに上った。斜面一面が見事なお花畑で、下から見上げると見事すぎてうそみたいな光景が目の前に広がる。サルビアの赤と紫とマリーゴールドの黄が順番に重ねられているエリアなど、本州では考えられない規模の鮮やかさ。丘の上からは、じゃまいも畑の緑の部分と休作中の土色がパッチワークのように配置されている風景が一望できて、とても気持ちがよかった。じゃがいもの花が咲いているときは、一面真っ白になって、それはそれで圧巻とのこと。

以上、あっという間に過ぎ去った1日だった。結局、ペンションから一番近くの美瑛の丘が一番気持ちのよいところだった。今度の休日の過ごし方に影響を与える結果である。実はこの地へきて初めて、ドラマ「北の国から」の舞台が富良野だということを知った。ドラマを見たことがないので、富良野に対する思い入れが淡く、土地としては富良野より美瑛が性にあっていると思う次第である。
8月19日(土)

・ペンションごはん

実家の母が調子を少し崩したとのこと。大事に至りませんように。息子も元気でありますように。
8月20日(日)

・ペンションで炭火焼ジンギスカン

宿泊しているペンションのオーナー夫妻が今日は他のお客さんをとっていないから外でジンギスカンをしようと誘ってくれた。お話を聞くに、私たちのように長期連泊する客を今回初めてとったそうで、外でジンギスカンも今回初めての試みだそうだ。温泉との相性もよいし、私たちはとても幸運に恵まれたようだ。

ワインに漬け込んだたれ付ジンギスカンをさっと焼いて口に放り込む幸せ。臭みは一切なく、やわらかく、ちゃんと羊肉の風味も濃く味わえた。秋の風情が漂い始めた野外で食事する気分のよさ。奥さんの手料理(文字通り、手で作った料理)も毎日堪能しているが、このシンプルな料理も気分が変わってよかった。

夜稽古の後、実家に電話すると、母も電話に出て、これから治っていくだろうなという張りのある声が聞けて一安心だった。息子や夫が病気やけがをしたときは、自分がしっかりしなくてはとかえって冷静になるのだが、母の調子が悪いという知らせは「全然心配ないから」と言われても私を不安にさせる。やっぱりマザコンなのかな。

夫にも電話した。2泊3日で富山に出張していたとのこと。26日からは韓国出張だそうで(てっきり中国かと思っていた!)、次期首相になろうという人が余計なことを言わないか気にしていた。夫も沖縄から帰ってずっと風邪がぐずぐず治っていない。それでも庭や鉢植えの植物の世話をお願いしてしまうのは、ずっと元気でいてくれるとどこかで無根拠に信じているからなのだろう。
8月21日(月)

・ひめますの天ぷらなど、ペンションごはん

今日は月曜日なんだ。完全に曜日感覚がなくなっている。サラリーマン研究者の日常とはかけ離れた生活をしているのを実感する。ちなみにペンションの他のお客さんから「学生さん?」と話しかけられた。昔は若くみられるのはあまり好まなかったが、いまはうれしく思う。

いつも洋食主体の夕飯なのだが、今日は天ぷら、ピリ辛の和え物など、和の要素が強い献立だった。ひめますを見たのも食べたのも生まれて初めてだった。10数センチのかわいらしい魚なので、頭からばりばりむしゃむしゃありがたくいただきました。

両親に頼んで地元の病院に息子を連れて行ってもらったところ、もうすぐ完治の診断結果をもらえそうなところまで来た。もちろん油断は禁物だけど、いい知らせを聞けてよかった。

本日、『ソウル市民:昭和望郷編』がとうとう脱稿した。いろんな団体が出入りする青少年交流の家での合宿期間中に、ぐわっと書き上げられるんだから、芸術家の頭のなかはどうなっているんだろうと不思議に思う。明日と明後日は、平田オリザさん主催のワークショップが富良野で開催されるので、演出付稽古はなし。私たちは休みになる。明日はゆっくり休んで、明後日は持ち帰った仕事をする日に充てようかな。
8月22日(火)

・豚の角煮など、ペンションごはん

休日第1日目。

夕食の豚の角煮がとてもおいしかった。奥さんから話を伺うと、朝から仕込んだ贅沢な一品だということが分かった。2度に分けて煮るのがポイント。まず酒で煮て、次は調味料を入れて煮る。2度目に煮るときは、つぶがごろごろ残ったイチゴジャムで甘みをつけたそうだ。どうりで、複雑な味がしたわけだ。昨日の天ぷらは椿油で揚げたということもおしえてもらった。きっとそのへんの気の遣い方の違いが、一見普通のようでいてなかなか他所では食べられないものを造りだしているんだろう。

ペンションの客のうち、昨日私に「学生さん?」と質問した方とそのお母さんで85歳になるとてもチャーミングなおばあさんと、ひょんなきっかけでいっしょにドライブすることになった。洗濯乾燥機が回り終えるのを待っていると、おばあさんが、これもご縁だからいっしょに行きましょうと誘ってくださったのだ。十勝岳の登山口のある望岳台、遠く向こうにいる牛を眺める広大な白金模範牧場、やたら熊出没注意の看板の出ている国設白金野鳥の森(小鳥のさえずりがよく聞こえるところ)、ビルケの森というところで野菜カレーとトマトジュースをごちそうになり、『優しい時間』という映画(まだ見たことない)や『北の国から』ゆかりの皆空窯のギャラリーをみてまわった。

その後、お礼をいって、お二人とは別れ、白樺街道約4キロの登りの遊歩道を1時間かけててくてくあるいて温泉地まで帰ってきた。そのあいだ誰にもすれ違わず。熊出没注意の看板を横目に見ながら白樺をゆっくりと愛でる余裕なく黙々と移動。今日は旭川の旭山動物園に行くことも考えないわけではなかったが、人気ゆえひとが多いだろうなと思い、結局敬遠した。けれど、だからといってまったく人気のないところを散歩するもちょっとなあ。4時ごろ自分の泊まっている部屋に入り、安心したのか知らぬ間に2時間昼寝をしていた。
8月23日(水)

・ガレージでバーベキュー

休日2日目。劇団稽古の受け入れ施設である大雪青少年交流の家の方々がバーベキューパーティを開いてくださった。カニ、ホタテ、イカ、タコ、エビ、つぶ貝、ほっけ、羊、豚、じゃがばた、焼きおにぎり、とうもろこし、アスパラ、たまねぎ、ピーマンなどなど、食べきれないほどたっくさんの食材が並んだ姿にはあまりの贅沢さに目がくらんだ。

それなのにそれなのに。お昼に、何を考えていたのか、近場のホテルのレストランで美瑛コロッケなるものを注文してしまい、それが胃もたれの原因になり、夜になってもお腹が空かなかったのだ。不覚。コンディション調整能力なし。単純にくやしい。目の保養&よい思い出となるよう、しっかりと網の上の海の幸、山の幸の姿を目に焼き付けた。

交流の家の所長さんや今回劇団を誘致した職員の方(ご自身も演劇と深く関わっていらっしゃる!)とお話ができた。話のなかで、交流の家の思いかけない使用目的を聞き、優れた企画をたてることのできる施設はこれからも続いていくに違いないと思った。

先に休日2日目と書いたが、これは私たち調査者にあてはまることであって、劇団員にはあてはまらない。演出付稽古のないときでも、5,6人のチームに分かれて、短い演劇作品を話し合いながら作り上げる「創作」と呼ばれる課題に取り組んでいるからだ。心身ともタフじゃないと務まらない、ハードな環境に身をおいている。すごいことだと思う(←私はひとりになれる時間が一定以上とれないとすぐバランスを崩すほうだから)。
8月29日(火)

・東京駅で冷やしとろろ蕎麦

ここ最近日記を書いていないなと思ってる間に、あっという間に時間がたった。

26日に北海道から東京に移動した。ウィークリーマンションに荷物を置いたあと、休みを利用して岡山の実家に息子に会いに行った。本日、東京入り。明日からまた数週間かけて、アゴラ劇場で稽古を収録させていただく。

ウィークリーマンションのネットワーク環境が整わない。なんでLANケーブル指しても、認識しないんだろう。IPアドレス自動取得もちゃんと設定されているのに。いらいらが募る。明日は早いのでリセットして、もう寝よう。
8月30日(水)

・しめじとベーコンのバルサミコスパゲティ

おかげさまでようやく無事インターネットにつながった。恒常的につながっていると頻繁に日記を書いて、こまごまとアップしたくなる。北海道のときは、月並みな表現だが大いなる自然に囲まれて、わざわざネットにつながなくても充足してしまったのに。環境に左右されやすい分かりやすい性分だ。

午前の時間指定をした北海道からの宅配荷物搬入のため、朝8時には稽古場で待機していた。待つこと4時間。12時にようやく荷物が届いた。2時から5時まで別の作品の稽古が入っているので、急いでセッティングした。大忙しだった。

稽古が終わる夜10時ごろ、自分の所持金は数百円しかないことに気付いた。北海道・白金温泉と違い、東京に来ると、いつでもお金を下ろせると思ってかえって困窮を招いてしまう。同行者にお願いして千円貸してもらった。

はて千円で何を食べよう。最初に思いついたのはマクドナルド。マクドナルドなら、ひもじい思いをすることはあるまい。のびのびと自分の好きなものが食べられる。もう少し高くておいしいものがたくさんある店だと、あれも食べたい、これも飲みたいという思いを我慢しなくてはならない。そんな切ない思いをするのはいやなのだ。ところが、神泉駅隣接のマクドナルドは閉まっていた。午前7時から午後8時までの健全な時間帯で営業している店だった。

マクドナルドからの帰り道、屋台小屋風のラーメン屋にも興味がそそられたが、ちょっと覗くとディープな雰囲気が漂っていたので、やめた。ということならと、結局ウィークリーマンション近くの食堂でスパゲティを食べた。しめじとベーコンのバルサミコスパゲティは、素直にしめじとベーコンとバルサミコ酢の味がして、ややこしくなくて好感がもてた。今日は深みのある味を拒否したい日のようだ。

マンションの1階は24時間オープンの食品館なので、夜遅いのだから、そこで惣菜やら弁当やらを買って部屋で食事する手もあるのだが、私はそういうのがかなり苦手だ。同じひとりでも、ひとりで外食する(大好き!)のとは訳が違う。なんというか、どうしていいか分からなくなる。考えてみれば、ひとり部屋にこもって全くのひとりでものを食べることは18歳で親元を離れるまでしたことがなかった。慣れていないし、あまり慣れたいとも思わない。お弁当買うよりも一段と高級な行為に思える自炊も、一人暮らし中、あまり経験しなかったなあ。結婚したら、曲がりなりにも自分(たち)で作ることが多いので、なんだ、私ってとっても家庭向きの人間なんだと一人納得していざ就寝。
8月31日(木)

・野菜カレー

またも休みの日。前日遅くまでたまったメールの返信作業をしたせいか、お昼近くまでぐっすり眠ってしまった。久々にフルタイムでひとりの時間をもてる日だった。長期出張の折り返し地点にきており、北海道頭から東京頭に切り替えるためにも、仕事一切抜きに自分の好きなことをして、頭を真っ白にすることにした。昼間はご近所渋谷で過ごした。チョコレート屋でおいしい赤ワイン(スパイシーかつ果実味のあるタイプ)と蜂蜜入りダークチョコレートアイスを頼み、至福のときを過ごした。洋服屋をめぐり、毛皮のショールやコートに袖を通してうっとりした。狐か狸にでもとりつかれたのかと思うくらい、いま霧消に毛皮が気になるのだ。ただし欲しくはない。試着のみ。西武B館の酸素バーも試してみた。効き目はいまいちよくわからなかった。夕方は、岡本太郎の壁画『明日の神話』を見に、新橋の日テレ広場まで足をのばした。夕方から夜にかけて、本屋を物色し、夜は、読書。ついでに夕食という感じ。

ほんとのことをいうとからだは寿司を求めていた。けれど、鮨屋に女ひとりで入る勇気などなく、また本も続けて読みたく、喫茶店で気軽に食事を済ませた。鮨屋や居酒屋にふらりと入れる初老の男に必要なときだけ変身できればどんなに都合がよいだろう。